お見舞いⅡ
先日ホスピスに叔父を見舞ったとき、
暗い影が微塵も見られない叔父夫婦に接し不思議に思った。帰途の車中では夜中に目覚め叔父は死の怖さや悲しさに襲われるのではと懸念した。
しかし、あの明るさは芝居でも表向きの振る舞いでもなく、私の浅はかな憶測、杞憂に過ぎず凡人ゆえの間違いであると気付いた。
昨日本を読んでいて、<星の王子さま>で有名なフランスの作家「
サン・テグジュペリ」の言葉に出会った。
そこには……「
人が生きるとは、ゆっくり誕生すること」……と書いてある。その言葉を読んで思った。
人は逃げることのできない命が燃え尽きることを確実に知ったとき、
残る日々に新しい自分を誕生させる。叔父夫婦の笑顔を思い返し、そう思った。
私もそのときになれば、潔く悟ることができるのだろうか。ちょっと心配である。
つるばらが咲き始めた。