回り灯篭

古葉茶庵

2010年05月01日 14:12


 好むと好まざるに関わらず連休がやってきた。どこにも行く所がない(……というより行きたい所がない)。昨日は日曜大工の材料を求めて製材所めぐりをした。

 山中の製材所とて侮るなかれ 製材する鋸はコンピューター制御、切断線は赤外線表示である。

 閑話休題

 連休……旅といえば世の中には汽車、電車好きの「キ印」の人が少なくない。

 <内田百聞>は「汽車を目の中に入れても痛くない」と言い、<寺山修司>は「墓は汽車の連結器の中に作って欲しい」と言ったそうだ。この類の人が沢山居る。

 この人たちは、みな旅情に敏感で唱歌「汽車」の一節「回り灯篭の絵のように / 変わる景色のおもしろさ」……を満喫する人たちである。

 そんな唱歌のような電車がわが街にある。「終着駅は始発駅」の小さな駅を1両から2両編成の鈍行で離れる。駅を出るとすぐ短いトンネルをくぐる。

 街が田んぼになり、海岸になり、海がキラキラ輝いて見える。目を細めて眺める車窓の変わる風景が愉しい。


 今、高速道を車で走っても高速新幹線も地下やトンネルを走る。モグラ型の旅に回り灯篭の面白さは無縁であろう。田舎の各駅停車の鈍行旅はいかが。

 最後に「啄木」の歌を添える。

 <雨に濡れし夜汽車の窓に / 映りたる / 山間(やまあい)の街のともしびの色


 秋の豊作を予測させてくれる我が庭のカボスの花に蜜蜂が群がっている。