夢はここから始まった

古葉茶庵

2010年03月16日 13:12


 古歌にある。<子は親に似たるものぞよ 亡き人の恋しきときは鏡をぞ見よ> ~亡き父母に逢いたい時は鏡をごらんそこにいるだろう>……と。

 中島みゆき、20代の作曲「異国」の一節、<忘れたふりを装いながらも / 靴を脱ぐ場所が空けてある / ふるさと

 ふるさとと父母はいつも重なる。


 今の季節、私の好きなぴったりの歌がある。……伊勢正三さんが22歳のとき作詞・作曲した「なごり雪」。フォークグループ「かぐや姫」が1974年に発表、75年に「イルカ」がシングルを出し大ヒットした。

 <汽車を待つ君の横で僕は 時計を気にしている 季節はずれの雪が降ってる 今春が来て君はきれいになった 去年よりずっときれいになった

 この歌の舞台は季節はずれの雪が降る東京駅、でも曲を作っていたときにまぶたの裏に浮かんだのは日豊線大分津久見駅だった。

 私は昭和62年から7年半の間、大分県佐伯市に住んでいた。佐伯駅から海岸沿いに右に海を、左にみかん畑を眺めながら石仏で有名な臼杵に至る中間の駅が津久見駅である。



 「列車は車と違って、レールを引き返すことが出来ない」……決意と不安を胸に青春のほろ苦さや切なさ、いろんな想いを歌に込めたという。

 昨年秋から特急列車発着の度に津久見駅ホームに「なごり雪」のメロディーが流れる。

 寒の戻りの去ったさる12日、伊勢さんメッセージの記念碑が除幕された。

 <線路の先にはロマンがある。日本中……どこか誰かとつながっている。思えばあの日、ここから僕の夢は旅立ったのです。ホームと言えば、心の奥深くいつもこの景色があるのです。>……と記されている。

 3月は旅立ちの季節、今の季節いつかあの道を辿ってみたい。