初めて語る北朝鮮
蓮池薫著「
半島へ、ふたたび」を読んだ。
拉致被害者・蓮池薫さんの兄・透さんは、かって対北強硬派と目されていた。しかし、最近では「制裁一辺倒では拉致問題の解決は疑問」とし、交渉に軸足を移すよう説いている。
考えを改めたきっかけは弟から北朝鮮の話を聞いたことにあるらしい。薫さんは、
一体、何を語ったのか何を語っていないのか
そんな彼の
北朝鮮との距離の取り方を知りたい。
その想いを知りたくて
本を手に取った。
前半は初の韓国訪問記、機内から朝鮮半島の山野が見えた瞬間、「背筋にヒヤリとしたものが走る。」感覚に襲われたという。
現在の韓国事情について、北と比較しながら詳細に述べている。蓮池さんのガイドつきで韓国旅行をしてみたくなった。
後半では、翻訳作家に込めた想いに胸が熱くなる。「人生の絶頂期ともいえる青春時代の二十四年間を北朝鮮に奪われた。それを取り戻す手段は没頭できる仕事だった。」と言っている。
今や彼は
「日韓」のみならず、「南北」をも比較しうる稀有な語り手でもある。
「今でもなお、自分が故郷の地に立っていることを本当に現実なのかと疑うときがある。」という蓮池さん。「被害者として何ができるかを考え、残された人が一日も早く帰れるよう努めたい。」という。
その心模様をこれからも描き続けて欲しい。