「亭主関白」ロマン???
……
一日の仕事に疲れ、家路に就く。玄関を開けると、妻が和服姿で三つ指をついて「お帰りなさい、お風呂になさいますか、それとも食事にしましょうか」と言う。その姿を見、声を聞いて疲れが取れてゆく。……
このように書けば世の中の全ての女性から「
何を馬鹿なことを……気でも狂ったか」と罵声を浴びせられること必定である。
……だから、これは男が幾度となく抱く「
はかない望み」であり、ただ思うだけで、決して実現することのない『
夢想』である。
明治時代の啓蒙思想家で、慶応義塾の創立者・福澤諭吉(1835~1901)は、大分中津藩の13石2人扶持の低い身分の家に生まれた。妻・錦は250石の上士の娘として厳しく育てられた。
福澤が出かけるとき、帰ってきたとき、
錦は三つ指をついて送り迎える。……この男の
亭主関白のロマンを、福澤は
そんな不合理なことをする必要がないと言い、妻・錦は「はしたない」と言ったそうだ。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の言葉を残した。福澤の言葉は亭主関白たろうとする我が身に耳がつんざけるほどの痛さで迫る。
「天の人を生ずるや、開闢(かいびゃく)の始め一男一女なるべし。男といい女といい、等しく天地間の一人にて軽重の別あるべき理なし」
「一家の主人、その妻を軽蔑すれば、その子これに倣って母を侮りその教えを重んぜず。母の教えを重んぜざれば、母はあれどなきが如し」
上記の言葉、重々心に納め奥方に対処されたい。巻頭の
「亭主関白ロマン」など永久に望むべきにあらず……だろう。……<
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